SDGsと企業経営(2)SDGsと企業経営

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SDGsと企業経営(2)SDGsと企業経営

岸 和幸:キシエンジニアリング㈱代表取締役、㈱ コンサルティングアソシエイツ・コンサルタント

 
目次

-変化の激しい時代
-広がるESG投資の動き
-CSVで先行する欧米

「変化の激しい時代 」

企業の持続可能な経営、すなわちサステナビリティ経営」とは、企業が事業活動を通じて地球環境や社会に対する影響に配慮しながら、長期的な発展を目指す経営のこと。近年この「サステナビリティ経営」が注目されている理由に、現代が「VUCA」の時代と呼ばれるように企業を取り巻く外部環境が大きく変化して先行きが不透明ななことがあります。

「VUCA」とは、変動性(volatility)、不確実性(uncertainty)、複雑性(complexity)、曖昧性(ambiguity)の四つを組み合わせた言葉。もともとは1990年代後半に米国で軍事用語として生まれた単語で、2010年に入りユニリーバなどの経営者がアニュアルレポートで使用し始めてビジネスの現場にも広がったと聞きます。

外部環境で頻発する想定外の出来事として、年々その異常さを実感させられる気候変動や不意打ちでの自然災害、インターネットの新種ウイルス等、国内外のあちこちで予測不可の中で大小様々に起きています。また今後10億人もの人々が新たに中間層となると予想されており、あらゆるモノやサービスを求めるようになれば自然資源はひっ迫して食糧価格は高騰し、新たな食糧危機が起きる可能性もあります。

企業は、著しい変転の中にあります。現在は未だその中にいなくても、いつその渦の中に巻き込まれるかわかりません。固定化され成熟している市場は「レッドオーシャン」となり、その中で企業は顧客を引き付けるために低コスト化か差別化の二者択一を迫られています。「ブルー・オーシャン戦略」のW.チャン.キム教授が言うように、「血みどろの競争を繰り広げて疲弊していくのでなく、競争のない市場を創造すること」が、企業の持続可能な経営に必要です。


「広がるESG投資の動き」

企業が持続的に成長するためには、経済を支えている環境と社会が健全であることが大前提です。環境や社会に大きな影響を与える存在である企業は、近年経営の透明性を世間から厳しく見られるようになりました。一方で、社会的問題を創造的に解決する大きな力を持つ組織としての期待も高まっています。

「ESG」とは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字をとった略語。「持続可能性を測る尺度」でもあり、2006年に当時の国連事務総長コフィ―・アナン氏が責任投資を提唱したときに初めて使われました。(図1参照)

(図1)世界でESG投資が拡大するメカニズム


「ESG投資」とは、市場メカニズムを通じ、株主がその立場・権利を行使して、経営陣に対し企業の社会的責任に配慮した持続可能な経営を求めていく投資のこと。世界持続的投資連合(GSIA)によれば、2018年のESG投資額は世界で約31兆ドル(16年比で34%増加)。地域別を見ると、欧州が約14兆ドル(2年前から17%増)、米国が12兆ドル(38%増)、日本は2兆ドル(約224兆円)と伸びています。

日本での伸びの背景には、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などの年金基金や政府系ファンドなどがESG重視に転換し、運用会社が資金を受託するためESG投資を推進していることがあるようです。投資家は、ESGの調査を通して企業と対話を行う機会を増やし、企業側は統合報告書などを通じて自社の戦略を開示するという動きが広がり、ESG投資は日本でも広がり始めてきました。

私は2011年まで(株)リコーの社会環境本部(現サステナビリティ推進本部 )に勤務していましたが、同社では国際的な競争を勝ち抜くためにはESG投資を無視できない現実に直面したと聞きました。

『欧州の大口顧客と数十億円の商談の際、相手が契約書に「ESGの視点でリコーの工場を監査する」という一文を盛り込んだのだ。この監査で温暖化対策が甘いとみなされれば、取引に影響が出かねない欧州の別の大口顧客からは、CO2排出の進捗状況を毎月報告するようにも求められた。リコーは、事業に必要な電力を再生エネで100%調達することを目指す国際的な企業連合「RE100」に日本企業として初参加。仕入れ先の中小企業にも同様の取り組みを呼び掛け、目標実現を目指す。』(東京新聞2019年3月15日朝刊からの引用)

「CSVで先行する欧米」

マイケル・E・ポーター氏(ハーバード大ビジネススクール教授)が提唱した「CSV」(Creating Shared Value)企業がステークホルダーと共創しながら社会的価値と経営的価値を両立させるという考え方です。CSRと同様にCSVも社会的な課題に向き合う点は同じですが、CSVは「ビジネスを通して社会的課題に取り組みながら企業価値を上げる」ことを目的としています。(図2参照)

(図2)CSV先進企業


第1章で紹介した次代に大きな影響力を持つであろう「Z世代」。その価値観を重視して、未来を見据えたCSVにユニリーバやネスレ、アディダス、デュポンなどのグローバル企業が挑み、実績を上げています。

ユニリーバは、2010年にCEOのポール・ポールマン氏のリーダーシップで導入したユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン(USLP)で、「環境負荷を削減し、社会に貢献しながら成長を実現する」という野心的な目標を掲げました。具体的には、世界で10 億人の健康やウェルビーイング(身体的にも、精神的にも、社会的にも良好である状態を表す)の向上、環境負荷の半減、社員・サプライヤー・小売業などを含む数百万人の生活の向上、などに取り組むもので、現在USLPで掲げた数値目標のうち80%で既に目標を達成、あるいは順調に進捗しているそうです。

HPを見ると、2008年以降製造工程の環境効率向上で約620億円を超えるコスト削減、サプライチェーンにサステナビリティの視点を組入れて2017年末までに原材料となる農作物の56%で持続可能調達を実現、社員の90%がユニリーバで働くことに誇りをもち採用活動を行う52カ国中44カ国で「最も望ましい雇用主」に選ばれる、過去4年間で売上成長率を上げてUSLPのブランドが2017年売上高の70%を達成しています。

「サステナブル・リビング・ブランドが成長を続けているという事実は、このビジネスモデルがうまくいくものだということを示しています。私たちは、まだ達成できていないことも透明性をもって公開しています。これは非常に重要なことです。なぜなら、透明性は当社にとって最も重要な資産である信頼をもたらすものだからです。世界中の多くの組織で信頼が揺らいでいる時代、信頼される企業として中心的役割を果たすことは、これまで以上に重要です」とポール氏はいいます。

SDGsの目標を次なる新規事業の創造の種として先行するサステナビリティ経営の企業。
ESG投資の追い風も受けながら、社会課題の解決を大義としてNGOや消費者、政府機関などステークホルダーと連携しながらオープンイノベーションを推進し、潜在的な市場を具現化させるビジネスモデルを創り出し、「ブルーオーシャン」をいち早く開拓しています。

然らば、これから挑む企業がCSV を創造しSDGs推進の経営を進めていくには、何が必要なのでしょうか?
自社がSDGsに取り組む大義ビジョナリーな社員の「思い」「自然資本」や「社会・関係資本」等が重要になってきます。

★第3章「SDGs推進のために」(https://www.caconsul.co.jp/media/2019/07/01/13)で続きをご覧下さい。 

 


★「SDGs関連サービス」
はこちらをご覧下さい(http://www.caconsul.co.jp/businessarea/sdgs.html



以上


筆者プロフィール
岸 和幸 (きし かずゆき)
キシエンジニアリング㈱代表取締役、㈱コンサルティングアソシエイツ・コンサルタント、Cremony代表
1965年生。大学卒業後、IT企業で12年間金融保険系のSEに従事する。その後、2001年より(株)リコーでシニアスペシャリストとして生物多様性・生態系保全の新規事業開発に取り組む。
(事業ミッション) 企業主体による持続可能な社会の共創
(主な新規事業) 国内・海外での森林生態系保全プロジェクト推進、社員の環境保全
リーダー育成研修、ステークホルダーとの環境コミュニケーション、等
2012年独立。「サス学」(商標登録:三井物産)の開発に参画し、子ども~社会人に至る思考・表現・共創の能力向上に取り組む。「非認知能力」を高める人間学や脳科学の勉強会も主催。 
(主な外部委員、著作物)
・環境省 森林保全活動における民間企業とのパートナーシップ構築方策検討調査委員 2008年 
・企業と生物多様性のイニシアティブ(JBIB) R&D部会長 2008~2010年 
・東北大学 生態適応コンソーシアム運営委員 2009年~2011年
・共著:『企業が取り組む「生物多様性」入門』(日本能率協会MC)
 

 

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