よりよい社会づくりに貢献したいと考えております。
今回から5回にわたり、SDGsに纏わる記事を連載致します。ぜひご一読下さい。
SDGsと企業経営(1)SDGsとは何か
岸 和幸:キシエンジニアリング㈱代表取締役、㈱コンサルティングアソシエイツ・コンサルタント、Cremony代表◆目次
-SDGsは世界の共通目標
-地球の限界
-SDGsの認知度が低い日本
-SDGsを後押しする世代
「SDGsは世界の共通目標」
「SDGs=持続可能な開発目標」。2015年9月、「国連持続可能な開発サミット」に世界中から150人を超えるリーダーたちが集まり、採択したのが「SDGs」です。世界を持続可能なものにするために国連の全加盟国が採択した「2030年に向けて世界全体で解決するべき課題と具体的な目標」です。「誰一人とり残されない世界を実現する」を合言葉に、「17分野の目標」と「169のターゲット」「232の指標」で構成されています。SDGsは、ミレニアム開発目標(MDGs=2000年9月の国連ミレニアム・サミットで採択した共通目標)をさらに前進させることをねらいとしています。MDGsが採択された2000年頃、世界の重要課題は「途上国の貧困を削減する」ことでした。その後2015年頃の世界は、気候変動や災害、エネルギー、さまざまな格差、等新たに解決すべき課題の緊急性が高まり、人間社会を未来に向けていかに持続可能なものにしていくかの議論がされるようになりました。
SDGsの目標達成には、国だけでなく企業、NPO、地域、コミュニティ、個人など全てのセクターが協働していくことが必要です。SDGsが目指す社会、それは格差や不平等に立ち向かい、貧困や飢餓をゼロにし、誰もが健康で生きがいを持つことができる社会であり、地球上の生態系に配慮した生産・消費の経済活動が行なわれている社会です。国連は、SDGsのアイコンとして17個の目標がそれぞれ色どりされて分類した図を、誰でも自由に使えるように公開しています。(図1参照)
(図1)
「地球の限界」
「プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)」は、SDGs の基礎となった概念。主導した科学者グループのリーダー、J.ロックストローム博士(ストックホルム・レジリエンス・センター所長)は次のように語っています。『私たちの社会を支えている地球上の自然には限りがなく、それを使ってどこまでも豊かになれると誤解してきました。しかし、人類の活動の爆発的な拡大により地球は限界に近づき、増え続ける異常気象、生物種の大量絶滅、大気や海洋の異変など、地球は私たちに警告を発しています。今こそ、地球環境が安定して機能する範囲内で将来の世代に渡って成長と発展を続けていくための、新しい経済と社会のパラダイムが求められています。』
図2は、博士たち科学者が2014年に更新した「プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)」の現況です。9つのプラネタリー・バウンダリーのうち、気候変動、生物多様性の損失、地球規模の土地利用の変化、窒素と淡水域におけるリンの4つの限界値を超えてしまい、既に危険域に入っていることがわかります。
『有限の地球において無限の物質的成長が可能であるという物語が成り立っていた時代は、1990年に終わった』と博士は言います。そして、『人類による地球環境への圧力はほぼ飽和点に達し、地球は、増え続ける異常気象の損害や食糧・資源の価格変動といった形で、世界経済に対し請求書を送り始めている。』そう、私たちは、世界の繁栄を可能にする自然や地球との関係について、新しい視点で考え行動する必要があります。
博士が考案した「SDGsウェディングケーキ」(図3)の階層構造から、私たち人間の社会と経済は地球環境という大きな柱に支えられていることが一目でわかります。図1のアイコンに加えて図3を活用することで、自分たちの事業や活動と環境・社会・経済の直接的、間接的なつながりが理解しやすくなり、全体最適に近づくSDGs の解決アイデアやデザインが促進されるでしょう。
(図2)プラネタリー・バウンダリー
(図3)「SDGsウェディングケーキ」
「SDGsの認知度が低い日本」
さて2018年7月、国連持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)などが、SDGsの国別達成度ランキングを発表しました。1位のスウェーデンから上位順に、デンマーク、フィンランド、ドイツ、フランス、と欧州の各国が名を連ねています。
日本は15位(156カ国中)の結果になりましたが、残念なのは一年前の11位から順位が落ちていることです。その原因として、「目標5:ジェンダーの平等」や「目標13:気候変動の対策」に関する得点が低いこと、また漁業資源の管理に関する「目標14:海の豊かさを守ろう」の得点が下がったことが挙げられています。(引用元:サステナブル・ブランド ジャパンのニュース2018.7.12)
電通が2018年4月に行った「SDGsに関する生活者調査」(国内10~70代の男女各100名、合計1400名が対象)では、SDGsの認知率は全体で14.8%という結果でした。世代別に見ると、20代19.8%、30代16.5%、40代13.3%、50代11.6%、60代15.1%となっています。
一方で同社実施の「電通ジャパンブランド調査2018」では、世界20カ国・地域におけるSDGsの平均認知率は51.6%。特にASEANにおける認知率が高く、ベトナム80.7%、フィリピン70.3%。この中で最も低い数字のフランスが24.7%です。調査自体は異なるものの、日本の14.8%という認知率はかなりの低さであることがわかります。
「SDGsを後押しする世代」
ところで近年、世界的に社会へ影響を与え始めている世代として「ミレニアル世代:1981年~1996年生」や「Z世代:1996年~2010年生」が大変注目されています。Z世代の特徴は、デジタル・ネイティブである、社会課題への意識が高い、本質に価値基準を置く、起業家精神が旺盛、プライバシーを重んじる、等です。
今年3月に掲載された日経新聞の特集記事「リユースの旗手たち」。その第5回「北米3300店 メルカリを阻むリユースの巨人」に興味深い言葉があります。
『(3月中旬、テキサス州オースティンで「サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)」が開催された。最先端のテクノロジーやスタートアップ、芸術家があつまる祭典)。注目されたのが「エシカルショッピング(倫理的な買い物)」と題したセッションだ。消費に詳しいコンサルタントのカイル・フロイント氏が熱弁をふるった。「消費者は『正しいこと』を求めている。消費を通じてポジティブな気持ちになりたいのだ。ミレニアル世代以降、その傾向はより顕著になる。」』
この記事の最後の言葉、『ミレニアルやZ世代が消費に求める価値。それは少なくとも旧世代が追い求めた「同じ商品を安く早く」ではないことだけは明らかだ。』今後ミレニアルやZの世代が世界的に発言や行動の力を大きくしていくであろう社会では、サステナビリティ(持続可能性)の潮流がますます増していくことと思います。
然らば、社会から歓迎される様なより良い商品やサービスを提供しようと努力してきた企業は、このSDGsにつながるサステナビリティの大きな流れに乗るためにはどうすればよいのでしょうか?どんな経営、ビジネスが社会から求められているのでしょうか?
★第2回「SDGsと企業経営」で続きをご覧下さい。(https://www.caconsul.co.jp/media/2019/06/14/9)
【自治体の皆様へ】
弊社では、各自治体と連携し、市区町村からご提示頂いた地域課題を解決するプログラムを
実施しております。研修の一環ではありますが、「民間企業から地域課題解決のヒントを得たい」
「関係人口を増やしたい」「自分たちの地域を好きになってほしい」などのご要望が
ございましたら、お気軽にコチラよりお問合せ下さい。
★「SDGs関連サービス」はこちらをご覧下さい。(https://www.caconsul.co.jp/businessarea/sdgs.html)
筆者プロフィール
岸 和幸 (きし かずゆき)
キシエンジニアリング(株)代表取締役、(株) コンサルティングアソシエイツ・コンサルタント、
Cremony代表
1965年生。大学卒業後、IT企業で12年間金融保険系のSEに従事する。その後、2001年より(株)リコーでシニアスペシャリストとして生物多様性・生態系保全の新規事業開発に取り組む。
(事業ミッション) 企業主体による持続可能な社会の共創
(主な新規事業) 国内・海外での森林生態系保全プロジェクト推進、社員の環境保全
リーダー育成研修、ステークホルダーとの環境コミュニケーション、等
2012年独立。「サス学」(商標登録:三井物産)の開発に参画し、子ども~社会人に至る思考・表現・共創の能力向上に取り組む。「非認知能力」を高める人間学や脳科学の勉強会も主催。
(主な外部委員、著作物)
・環境省 森林保全活動における民間企業とのパートナーシップ構築方策検討調査委員 2008年
・企業と生物多様性のイニシアティブ(JBIB) R&D部会長 2008~2010年
・東北大学 生態適応コンソーシアム運営委員 2009年~2011年
・共著:『企業が取り組む「生物多様性」入門』(日本能率協会MC)