研修オンライン化の手順とポイント

HOME > 研修オンライン化支援 > 研修オンライン化の手順とポイント

 前回の記事では、集合研修とe-ラーニング、オンライン研修のメリット・デメリットを解説し、それぞれの特徴を理解した上での使い分けが必要とお伝えしました。
 今回は、実際に研修のオンライン化を図るうえでの手順とポイントを解説していきます。

研修オンライン化の手順とポイント

研修オンライン化の手順

通信環境を確認する

 言わずもがなではありますが、せっかくオンライン化を進めても、PCや通信環境が整っていないために受講できない、という事態は避けないといけません。まず初めにお伝えしたいのが、オンライン研修は「一人一台のPC」が(ほぼ)必須だということ。タブレットやスマートフォンでの参加はかなり厳しいと考えましょう。また、ヘッドホンやイヤホンを事前に受講者に用意いただくことも必須です。 オンライン会議システムは、Zoom、Microsoft Teams、Google Meet、Webexといったシステムが広く使われますが、会社の規定により使用できるシステムが異なりますので、必ず事前に確認しておきましょう。「Zoomは使えないけど、Google Meetは使える」とか、「アプリはダウンロードできないけれど、ブラウザ上であれば使用可」など、会社によってマチマチです。 通信環境についてクリアしないといけない課題は、最初に洗い出しておきましょう。

研修体系図を“仕分け”する

 まず考えるべきは、すべての研修をオンライン化しないといけないか、という点です。 詳細は前回の記事「集合研修、e-ラーニング、オンライン研修のメリット・デメリット」をご覧いただければと思いますが、オンライン研修にも向き・不向きがあります。
 当然、集合研修でないと効果があまり見込めないプログラムもありますし、逆に安価なe-ラーニングで済ませられるプログラムもあるかもしれません。 前回記事の解説も踏まえ、ざっくりと研修の仕分け方を整理すると

 ①「知識」の習得が目的のもの(ビジネスマナー、コンプライアンス、財務会計等)…e-ラーニングがオススメ
 ②「スキル」のトレーニングを目的としたもの(コーチング、ファシリテーション、論理的思考、問題解決等)…オンライン研修がオススメ
 ③「態度」の変容や「共通のアウトプット」を求めるもの(キャリアデザイン、リーダーシップ、ビジョンミーティング等)…集合研修がオススメ

 もちろん、実際にやってみると、「この研修はコレ、この研修はコレ」と、きれいには切り分けられないと思います。「この研修はe-ラーニングとオンライン研修の融合だな」とか「この研修のここの部分は集合研修が必須だけど、その他の部分はオンライン化しようか」など、ハイブリッド型が多く生まれてくると思います。
 重要なことは、すべての研修を無理にオンライン化しようとしないことです。 オンライン化すべきもの、しない方が良いもの、にしっかりと優先順位をつけていきましょう。

プログラムを再設計する

 優先順位を付けた後、実際にオンライン化する研修については、プログラムの再設計をしていきます。ここでの一番のポイントは、既存の研修プログラムを「そのままオンラインで実施する」のではなく、「オンラインの良さを活かしたプログラムに、がらっと組みなおす」という点です。これができないと、残念な「劣化版」研修が量産されてしまいます。
 では、次に、研修をオンライン化するうえでの注意点、ポイントについてみていきましょう。



研修オンライン化のポイント

オンライン会議システムの機能を使いこなす

 オンライン会議システムの種類にもよりますが、以下は最も一般的な「Zoom」の使用を想定して解説します。
 まず、「チャット機能」です。チャット機能は、講師への質問がある場合や、通信上のトラブルがあった際にヘルプを出すのに使うのが一般的ですが、その他にも感想をシェアしたり、誰かのコメントに、リアクションする(例:「88888」=パチパチパチで、拍手の意味)のに使用することも可能です。研修の冒頭で、なにか簡単な質問を講師から投げかけ、チャットボックスに一度全員が書き込む体験をしてもらうとよいでしょう。通常の研修で手を挙げて発言することを考えると、ずいぶんコメントが出しやすくなるのがオンラインのチャット機能の良さです。
 次に、「グループ討議」(Zoomではブレイクアウトルームという小部屋に分かれます)や「投票機能」もどんどん活用するとよいでしょう。投票機能は受講者が選択形式で投票すると、ほぼ瞬時に結果がでてくるので、受講者の興味を引き付けたり、参画度を高める効果があります。
 また、「録画機能」を使うと、ロールプレイングの様子を録画して、振り返りに使うことも可能です。営業研修やコミュニケーション研修などで使用するとよいでしょう。

グループの人数は3~4名が理想

 ブレイクアウトルームに分かれてのグループ対話ですが、通常の集合研修よりは1グループあたりの人数はやや少なめの方が話しやすいでしょう。理想は3~4名、多くても5名までです。6名以上にならないように工夫をしましょう。

演習や討議課題の提示は“超”具体的に

 特にブレイクアウトルームに分かれてのグループ討議の際に注意してほしいことですが、演習の提示は“超”具体的に行いましょう。オンライン研修では集合研修に比べ、講師・ファシリテーターが各グループを満遍なくタイムリーに観察することが難しくなります。そのため、ブレイクアウトルームに放り込まれた際にメンバー同士が固まり、“お見合い状態”が発生しやすくなるのです。「討議のテーマは何について話し合うのか」「誰から話し始めるのか」「話し合った結果はシートに書き出すのか、口頭だけでよいのか」といったことまで、(集合研修のとき以上に)具体的にお伝えするように心掛けてください。

「承認」を通常の3倍に。双方向性を強く意識する

 オンライン研修は、ともすると単調な進行となってしまうことがあります。受講者も冒頭こそ集中するものの、進行が単調だと、そのうち「ながら作業」で受講してしまう人も現れます。それを防ぐためには、受講者との「双方向性」を、集合研修時よりも強く意識しましょう。例えば、演習の提示をした後に「ここまでで質問はありますか?理解できましたか?」と確認する方は多いと思いますが、それに対して受講者が「OK」のリアクションをハンドサインで示してくれたとしましょう。その時に、「〇〇さん、早速リアクションありがとうございます。△△さんも、ありがとうございます!」という風に、名前を呼びかけながら話しかけるとよいでしょう。それから質問や感想をチャットボックスに全員一言ずつ書いていただくのも、双方向性の雰囲気づくりに大変有効ですが、その際、チャットボックスのコメントは、一つ一つ、読み上げるようにしてみましょう。人数が多いと、大変かもしれませんが、20名くらいまでなら全員分読んでいくことは可能なはずです。こうした小さな承認の積み重ねが、受講者の参画意欲を強め、創造的な場づくりにつながってきます。「承認」は集合研修の3倍、を意識して、ぜひ実践してみてください。

テクニカルスタッフは必須。トラブルはあるものとして準備する

 ここまで読んでいただくと「オンライン研修の講師・ファシリテーターは結構忙しそうだな」と感じられたかもしれません。まさにその通りなのです。
 さらに大変なことに、オンライン研修では受講者側の通信系のトラブルが必ずといってよいほど起こります。一番多いのは「音声が聞こえづらい」「フリーズした(いわゆる、“落ちた”)」というトラブルです。これについて、一つ一つ講師・ファシリテーターが対応するのは現実的に難しいため、事務局がテクニカルスタッフとして必ず待機するようにしましょう。また、受講者の電話番号は控えておき、チャットボックスでもやりとりできなくなった際には電話で話ができるようにしておくことも必須です。
 受講者がオンライン研修やオンライン会議システムに慣れていない場合、事前に動作確認を行っておくか、当日テストのために15~30分ほど早く入ってもらうようにしておきましょう。なお、言うまでもないことですが、講師・テクニカルスタッフのPCは何が何でも落ちてはいけません。無線Wi-Fiではなく、有線でつなぐようにしましょう。
 最後に、デモは必須です。講師・テクニカルスタッフ双方でしっかりと手順とタイミング、操作方法を確認しておくだけでなく、トラブルがあった際にどう対応するのかまで含めて、あらかじめ話し合っておきましょう。 集合研修も同じではありますが、オンライン研修ではそれ以上に事前準備が大切なのです。

短時間集中、複数回シリーズ構成で

 オンライン研修は上手に運営すると非常に対話が進み、集合研修以上の成果を生み出すことも可能です。一方で、PCの画面を集中して見続けるというのは、やはり疲れるもの。集中力を考えるとオンライン研修の適正時間は2時間程度と覚えておきましょう。もちろんそれ以上やれないわけではありませんが、学習効率は2時間を超過すればするほど下がっていってしまいます。
 とはいえ、内容を考えると「とても2時間じゃ収まらないよ」ということもあるかと思います。 その時のオススメは「2時間×複数回シリーズ構成」。これであれば、集中力を常に維持できる、というメリットの他に、「研修に参加しやすい」「各回のテーマが絞り込まれているので理解が進みやすい」というメリットが期待できます。さらに、各回の間に中間課題を入れていくことで、単なる学習にとどまらず「行動変容」が進む、という大きなメリットが生まれます。
 この点については次回「行動変容が最大化する!反転学習を利用したオンライン研修とは」で詳しく解説していきます。



まとめ:社内講師は、オンライン研修を自身で受講する

 

いかがでしたでしょうか。オンライン研修は対話が進みやすいため、絶大なパワーを発揮する可能性のあるツールである一方、集合研修と同じ意識で運営すると「集合研修の劣化版コピー」になってしまうということもお判りいただけたかと思います。
 社内講師・ファシリテーターをされる方に是非お勧めしたいのは、ご自身で他のオンライン研修を受講することです。自身が受講者として体験することで、受講者がどこにストレスを感じて、どんな講師のかかわり方に安心できたか、リアルに感じることが出来るはずです。
 可能であれば2~3回、別の講師・ファシリテーターのオンライン研修を受ける機会があると、それぞれの違いから学ぶこともできて良いと思います。これは集合研修の講師に慣れている方にこそ、お勧めしたいことです。研修講師・ファシリテーターも常に学びなおし(=アンラーン)が大切ですね。
 次回は、「行動変容が最大化する!反転学習を利用したオンライン研修とは」について解説していきます。


 

 

資料ダウンロード、お問い合わせはこちら!

事業・パートナー・採用に関するご相談はこちらからお問い合わせください

お問い合わせ

Copyright (C) 2017 CO., LTD. All Rights Reserved.