ある大手メーカーの人事担当者は、社内の雰囲気をどうにかしなければと悩んでいました。職場全体に停滞した空気が漂い、社員達の目がイキイキとしていないのです。
朝や帰りの挨拶も聞こえず、仕事中もコミュニケーションがなく、すぐそばにいるのに何でもメールで済ませてしまうような、おかしな状況になっています。確かに忙しいため残業もかなり多く、忙殺されているのは間違いないのですが、最近では、精神的にストレスを抱えて休みがちの人や、退職希望者も出てくるようになっていました。最初は業務量の多さによる疲弊感が原因かと思っていたのですが、どうやらそれだけが原因ではなさそうです。
よく話を伺ってみると、そこにあったのは周囲への無関心でした。
関係する仕事を抱えてはいるのですが、お互いの仕事をよく知らないまま、自分の仕事だけをやっています。スムーズな連携が取れていないのでクレームも増え、その対応も後手にまわり、さらに業務量が増えるという悪循環。
忙しくなるとますます他人に構う余裕がなくなり、良くない雰囲気であるのは誰もが感じているのですが、自分のことで手がいっぱいで、誰も何も言い出そうとしません。
人事担当者は、何か社員の意識を変えるための研修を、とも考えましたが、たった1日や2日の研修でこの深刻な事態が変わるは到底思えませんでした。「こんなに忙しいのに研修なんて」「だから人事は現場が見えていない」と不満が上がるのは確実です。
色々なコンサルティング会社に当たってみてはいましたが、職場の活性化をテーマに実践的なプログラムを提供しているところはありませんでした。
民間企業出身者が集まるCAのコンサルタントは、職場の実務や、陥りやすい状況などもよくわかっています。研修の限界も理解しており、今回は座学ではなく現場で各自が実際に行動をしてみて、それを振り返ることで学んでいく「アクション・ラーニング」という手法を提案しました。課長クラスが対象です。

忙しい中で集められ、受講者達は当然のことながら、最初はあまり乗り気ではありませんでした。しかし、今回は1回の座学で終了ではありません。実際に職場で取り組むうちに変化を実感でき、だんだん目の色が変わってきました。
職場にも少しずつ変化が見られ、まず挨拶が出るようになり、さらにお互いの業務内容をマップにするなど協力する為の仕掛けが出てきて、コミュニケーションが復活してきました。そんな変化を見て、課長達も自信がついてきています。受講者である課長同士がお互いの悩みや努力を知ることで、自分だけじゃないと安心した、自分も頑張ろうという気になった、という声もありました。職場の活性化だけでなく業務の効率化も進んでいます。
その後、この取り組みは社内でも評判を呼び、管理職対象の定番プログラムとなっていきました。それでも、社内の活性化への取り組みはまだ始まったばかり。新たなチャレンジにもこれから取り組んでいこう、と人事部内も活気づいています。
ある建設業界B社では、「新入社員に人事は何を教えているんだ」と現場から苦情が続出していました。また、最近は新入社員の質が落ちてきているという声もちらほら聞こえてきます。
試験や面接をクリアした優秀な若者のはずなのですが、自分から発言したり、質問するような積極性が感じられません。自分で考えずにすぐ答えを聞きたがり、言われたことはちゃんとやるものの、それ以上に何かをしたり、自分から周囲に関わろうという姿勢がないようです。
一方で、新人からは「人によって言うことが違うので困る」「みんな忙しくて話しかけづらい、声をかけにくい雰囲気がある」「どんどん質問してこいと言うくせに、質問すると自分で考えろと怒られる」などの不満も上がっています。
もともと、その会社では「新入社員は育成担当の先輩社員が指導する」という制度があるだけで、期待する成長後の姿を新入社員自身に自覚させるような、明確な育成ゴールというものがありませんでした。また、育成担当者の指導方法も質もバラバラなうえ、新人育成に取り組む意欲も差があるため、うまく機能していません。
さらに、「育成担当者によるOJT」と「所属部署の上司による全体把握」と「新人研修」がリンクしておらず、例えばどんな研修に参加してきたのかを育成担当者が知らないこともありました。
なぜ、このような状況になるのでしょうか?もう少し、職場の状況をインタビューしてみることにしました。その結果見えてきたのは、新人と育成担当者の相互理解の不足でした。積極的に質問しない新人と、忙しい先輩。落ち着いて話し合う時間が取れておらず、コミュニケーションが不足しているようです。また、どうコミュニケーションをとればいいのかが、わからない状況でもありました。
まずは全員が共通の認識を持つことがポイントでした。さらに育成担当者や上司の成長など、会社全体の仕組みづくりが根本にあると考え、3年かけての実践を提案したのです。

まず新人研修に参加した新入社員からは「何を頑張れがいいのかが明確になった」との声が上がり、職場での業務に自ら取り組むようになりました。やる気がないわけではなく、何をやればいいのか、何を目指せばいいのかがわからなかったため、受身になっていたのです。
成担当者は「新入社員とのコミュニケーションが密になり、彼らが何を考え、何に困っているかがわかるようになった」ということで、的確なアドバイスができるようになり、さらに成長スピードや質を上げることができています。
また、職場全体で新人育成についての会話が増え、彼らの成長に関心を持つ人も増えました。人材育成は個人ではなく組織ぐるみで行うものだという認識が社員ひとりひとりに芽生え、人を育てていく風土が徐々に広がりつつあります。
組織が大きくなるにつれて、企業としての全体像を把握するのが難しくなってきたことを、C社の人事課長は危惧していました。
隅々まで目が行き届く規模だった頃は、各部署の雰囲気や課題なども何となく感じることができていましたし、各所からの声も聞こえてきやすい状況でした。しかし、大企業となった今ではもう、全てが把握できる状況にはありません。
売上や利益による成果は数字で見えますが、現場の実態までは目に見えません。もし現在の成果が、無理を重ねた結果だったり、ひねり出しただけのものであれば、継続的な成長は望めません。企業として長期的に発展していくために、会社全体での問題点は何なのか、人事として何をすべきなのか、実態にあった施策を打つ手がかりが欲しいと思っていました。
打ち手を考えるためには、まず現状把握が必要です。さまざまなコンサルティング会社から「企業診断」の提案を受けるものの、やはり高額であることがネックでした。
大企業の実態を各部署までくまなく調査するのには時間もパワーもかかるため、高額になるのは仕方がないと思うものの、その先でさらに重要になるのは、診断後の課題解決です。そこまでの予算を考えると、診断だけに何百万という金額は、とても手が出せません。
さらに、企業診断といっても「従業員満足」「マネジメント」「メンタルヘルス」「働きがい」など特定の切り口に沿ったものがほとんどで、人事として網羅的に知りたいことを叶えられるものは意外と少ない状況でした。あらゆる切り口での診断を行うと、さらに費用もかかります。企業診断に興味はあるものの、現実的には無理、という判断を下さざるをえませんでした。
その企業に本当に必要な打ち手をオーダーメイドで提案するのがCAの強みであり、大事にしていること。同じような悩みを持っている企業は多いため、CAでは自社で企業力診断「SMART」を開発しました。企業力を「仕事力」と「組織力」の2軸で診断し、安価でシンプルながらも人事の知りたい全体像が見えるものです。

他社の企業診断と比較してもはるかに低いコストで実施できるため、まずは一度トライアルのつもりで実施してみました。すると、手軽ではありながらも500名まで同じものを同じタイミングで受けられるため、会社全体の「今」の状況が、目に見えるように浮き彫りになってきたのです。
診断にはコンサルタントの分析シートも付いており、結果は「仕事力」は全体的に高いため成果は上がっているものの、一方で「組織力」が低いことがわかりました。このままのやり方では社員が疲弊してしまい、チームワークも発揮されない、個人集団となってしまう危険性があります。
この診断前には、売上アップにつながるようなモチベーション研修など、ますます成果を上げるための施策を考えていましたが、今後の長期的な成長のためにはまず社内の風土を整えることが先決と考え、CA担当者と面会を重ね、組織活性化プロジェクトチームを結成。もともと「仕事力」が高いということも自信となり、メンバーは意欲的に取り組んでおり、企業としての目指すべき将来の姿が描けるようになりました。また、企業力診断「SMART」をマネジメント研修で教材にも活用したりと、あらゆる場面で組織が活性化してきています。